リハデミック室

悩める新人セラピストへ~明日からの臨床に役立つ知識と技術~

『"らしさ"を取り戻すための評価と治療』

主な登場人物:新人PT セイコー(以下、セ)、若手先輩PT ジシン(以下、ジ)

セ「先輩、評価と治療の選択って難しいですよね。臨床では時間的制約もありますし、有効で効率的な介入ができているか不安になります…(泣)」

ジ「たしかにね。限られた時間の中でより良い結果を求められるのが僕たちセラピストのタスクだし、"燃える"とこでもあるよね。セ君は、どんなことを意識しながら評価と治療を選択してる?」

セ「これまでのお話から察するに、非常に情けないんですが、どうしても疾患や障害に基づいて評価と治療を組み立ててしまっている部分があります…(汗)」

ジ「それはよくありがちなことだよね。僕も新人の頃はとにかく何か結果を出さなきゃと思って、やみくもに一様の評価と効果のありそうな治療をやってた。でも、やっぱりそれだと患者さんの回復もある程度で頭打ちになっちゃうよね…。」

セ「本当にそうなんです。患者さんに申し訳ないし、悔しくてたまらないです…(泣)」

ジ「それを解決するためには、"なぜその評価と治療が必要なのか?"を考えることが大切だよ。つまり、どのような評価を選びどのように評価をしてどのような解釈をしてどのように治療するのか、を考えながら評価と治療を立案することで明確な理由をもった評価によって得た結果から予後を予測し、治療展開を創造していくことができるんだ。」

セ「評価と治療のなぜを探るわけですね!」

ジ「そう。あくまで評価は患者さんが有する症状に対して"なぜ?"を探るために行われるべきで、その選択される評価で"何を知りたいのか?"を明確にしておきたいね。」

セ「数値的評価スケールでは、特に気をつけないといけないですね。」

ジ「その通り。例えば、ROM測定は、単なる関節角度の測定ではなく、end feelによる原因組織の特定や制限されている動作の原因を推察するために行うべきだよね。あと、運動麻痺の評価では、Brunnstrom Recovery Stageがよく用いられるけど、その数値を知ることではなく、その人の歩行やその他の動作にどのような影響を及ぼしているかを知るために行われるべきだよね。」

セ「それができれば、治療に直結してプログラムの立案にも困りませんね!」

ジ「だから、評価と治療は切り離せないし、同時に行われるべきものなんだ。一人一人の症状に対して、明確な根拠をもった評価から結果を得ることによって、運動速度、回数の選択、歩行距離、補助具の選択、誘導方法や声掛けなど、そのすべてがオリジナルな治療になるんだよ。」

セ「すべてオリジナルだからこそ、その人"らしさ"が再獲得できるんですね!」

ジ「そう。得られた所見が治療選択においてどう活用されるのかを常に考えて介入に取り組みたいね。」

セ「少し不安が解消されました!(安堵)」

ジ「それはよかった。さぁ、ここまではリハビリテーション理学療法の概論的な話をしてきたから、次からは、より臨床ですぐに役立つ実践的な思考やテクニックについて勉強していこうか!」

セ「はいっ!ワクワクします!」

*引用文献
・藤野 雄次、他(編):そのとき理学療法士はこう考える 事例で学ぶ臨床プロセスの導きかた,医学書院.

 

本日のおさらい

1.なぜ、その評価と治療が必要かを考える

2.数値的評価スケールでは、数値ではなく現象をみる

3.評価と治療は切り離さない