リハデミック室

悩める新人セラピストへ~明日からの臨床に役立つ知識と技術~

『理学療法ってなに?』

主な登場人物:新人PT セイコー(以下、セ)、若手先輩PT ジシン(以下、ジ)

ジ「それじゃあ、リハビリテーションの一つの手段である理学療法について整理していこうか。セ君は、僕たちの生業である理学療法をどう捉えてる?」

セ「身体に障害のある人々に対して、運動療法や物理療法を行い、機能や活動能力の維持・改善を図る治療手段だと思います。」

ジ「随分としっかりした答えだね。びっくりしたよ。僕が新人の頃は、マッサージ、ROMex、筋トレ、歩行練習などをして患者さんを治療することだと思ってた。今思うと、実に目的意識がなく、抽象化に欠けた捉え方だったと恥ずかしくなるよ(汗))

セ「僕も国試のために暗記したのが辛うじて記憶に残っていただけで、日々の臨床ではほとんど意識できていません(泣)」

ジ「日々の臨床業務に追われていると、どうしても理学療法の本質を忘れてしまいがちになるよね。」

セ「そうなんです…。」

ジ「定義を確認すると、理学療法は、『理学療法士法及び作業療法士法』において、"身体に障害のある者に対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行わせ、及び電気刺激、マッサージ、温熱その他の物理的手段を加えること"とされている。」

セ「うわー、国試勉強で一生懸命丸暗記してたのが懐かしいです(笑)」

ジ「たしかにね(笑)まぁでも要するに、この定義からは様々な治療手段を用いて運動や動作を改善させるってことになるのかな。でも、実際の臨床ではこれだけでは不十分だよね。」

セ「リハビリテーションの一つの手段と考えるとなんとなくですが、重要なことが抜けている気がします。」

ジ「セ君、鋭いね!理学療法の対象は非常に幅広く、同じ年齢、同じ疾患でも個人にはそれぞれの心身の特徴や、生活歴、社会的背景、住居環境なども異なり、患者さんの状態像はその人のこれまでの"生活、人生"を反映したものだから、極めて"個別的"なものになるよね。」

セ「理学療法も奥深いですねー!」

ジ「つまり、疾患をみるのではなく、その人"らしさ"をみて評価・治療をするべきということ。そして、医療チームの一員として多職種と連携することで包括的なリハビリテーションの提供に繋がるんだね。」

セ「理学療法の本質がみえて、リハビリテーション理学療法の繋がりが理解しやすくなった気がします。」

ジ「まぁこれを臨床でしっかりと実現するのは経験値や職場環境にもよるから、なかなか難しいことかもしれないけどね…(汗)でも、このことが意識できているかいないかでは天と地の差だと思うし、全員に一様の理学療法を提供するなんてことはなくなって、各患者さんにテーラーメイド型の理学療法を提供できるようになると思うよ。」

セ「明日から早速、理学療法の本質を意識していこうと思います!あっ、でも…。」

ジ「あれ?意気込んでたのに、急にどうしたの?」

セ「個別性に配慮した理学療法ってどのように進めていけばいいんでしょうか…(汗)」

ジ「あー、ごめん、ごめん!それについても考えないと難しいよね。それじゃあ次は、その答えとなる"主訴"、"Hope"、"Need"を考えていこうか。」

セ「はーいっ!」

*引用文献
・椿原 彰夫(編):PT・OT・ST・ナースを目指す人のためのリハビリテーション総論 改訂第2版,診断と治療社.
・藤野 雄次、他(編):そのとき理学療法士はこう考える 事例で学ぶ臨床プロセスの導きかた,医学書院.

 

・本日のおさらい

1.理学療法は、単に運動や動作を改善させる手段ではない

2.理学療法の対象は、極めて個別的である

3.テーラーメイド型の理学療法により、その人らしさを追究できる