リハデミック室

悩める新人セラピストへ~明日からの臨床に役立つ知識と技術~

『主訴をもとに"らしさ"を追究しよう!』

主な登場人物:新人PT セイコー(以下、セ)、若手先輩PT ジシン(以下、ジ)

ジ「セ君は、いつ患者さんから主訴を聴取してる?」

セ「初期評価のときです。」

ジ「そうだよね。まず、1番最初に主訴を聴取すべきってことは学生時代の頃からしっかりと頭の中に植え付けられているよね。ちなみに、主訴と一緒に聴取すべきことがあったと思うんだけど・・・?」

セ「Hopeですね!」

ジ「その通り!セ君は、主訴とHopeをそれぞれどのように捉えてる?」

セ「主訴は、患者さんがいま最も困っていること、Hopeは患者さんの1番の希望だと考えています。」

ジ「そうだね。"主訴は、疾病や障害に関する患者さんの主な訴えのことで、現在最も困っていることや苦痛に感じていることを患者さんの言葉で表現してもらったもの(例 外を歩いていると、右膝が痛くなってくる)"、"Hopeは、患者さんの要望・希望であり実現可能かどうかは問題としていないもの(例 これまでのように家事ができるようになりたい)"であり、どちらも"主観的"なものになるね。そしてもう一つ、僕たち理学療法士が評価結果を統合と解釈したうえで把握すべきものが・・・?」

セ「Needです!」

ジ「そう、"Needは、患者さんにとって客観的に最も必要、且つ妥当で実現可能なもの(例 荷物を持って連続300mの歩行が痛みなくできる)"でなければならないよね。」

セ「多くの場合、Needが目標(ゴール)となることが多いですよね。」

ジ「そうだね。では、なぜ主訴を1番最初に聴取すべきか。」

セ「"らしさ"を追究するためです!(笑)」

ジ「タイトルのまんまやん(笑)例えば、“膝が痛い”が主訴であれば、そこから理学療法を展開していくことになり、どのような痛みなのか?どういうときに痛むのか?その痛みが具体的にどのように生活に影響しているのか?などを理学療法士としての専門性をもって、掘り下げていくことが評価の肝となるんだ。」

セ「主訴から必要な評価項目を考えることも大切なんですね。」

ジ「主訴を取りこぼしてしまうと、その人"らしさ"をみず、疾患や障害への先入観によってミスリードを起こし、目の前の大事な現象を見逃して、真の問題点を解決するのに遠回りをしたり、無駄な介入をしてしまう危険があるんだ。」

セ「だから、主訴なくしては理学療法は始められないんですね!」

ジ「また、主訴と併せてHopeを聴取することで、患者さんの状況を理解したり、生活や人生あるいは家族に対する思いの一部を知ることができるかもしれない。これは評価や治療に反映させるべき貴重な情報となるだけでなく、患者さんとの信頼関係を築くための重要なプロセスでもあるんだよ。」

セ「主訴とHopeって奥床しいものですね~。」

ジ「セ君、なかなか渋い言葉使うね(笑)」

セ「でも、臨床では必ずしも患者さん本人から主訴とHopeを聴取できるとは限らないですよね(汗)」

ジ「そうね。認知機能低下、終末期、小児など、自身の状態の理解が難しいケースや状況の判断が困難なケースもあるよね。その場合には、key personや、家族、介護者の主訴を優先することになる。もちろん、こういったケースでなくても聴取しておくと有益な情報となるけどね。」

セ「主訴とHopeを最初に聴取するのは大事ですけど、やっぱり最初だけではダメですよね?」

ジ「当然そうだね。経過に伴い患者さんの状況が変化し、主訴とHopeも変わる(例 膝ではなく腰が痛むようになった、回復が順調なので友人とバス旅行に行けるくらいになりたい、自宅ではなく施設入所することになった、など)ため、適宜確認し、Needを見直しながら介入を進めていくことになるね。」

セ「明日から、もっと患者さん一人一人の"らしさ"を追究していきたいと思います!」

ジ「いいね!主訴をもとにした理学療法の進め方を考え直したところで、次は、理学療法の根幹となる評価と治療について考えようか。」

セ「お願いします!」

*引用文献
・藤野 雄次、他(編):そのとき理学療法士はこう考える 事例で学ぶ臨床プロセスの導きかた,医学書

 

本日のおさらい

1.主訴なくして理学療法は始まらない

2.主訴とHopeは、その人らしさを知る手がかり

3.key person、家族、介護者のHopeも聴取するべし

『理学療法ってなに?』

主な登場人物:新人PT セイコー(以下、セ)、若手先輩PT ジシン(以下、ジ)

ジ「それじゃあ、リハビリテーションの一つの手段である理学療法について整理していこうか。セ君は、僕たちの生業である理学療法をどう捉えてる?」

セ「身体に障害のある人々に対して、運動療法や物理療法を行い、機能や活動能力の維持・改善を図る治療手段だと思います。」

ジ「随分としっかりした答えだね。びっくりしたよ。僕が新人の頃は、マッサージ、ROMex、筋トレ、歩行練習などをして患者さんを治療することだと思ってた。今思うと、実に目的意識がなく、抽象化に欠けた捉え方だったと恥ずかしくなるよ(汗))

セ「僕も国試のために暗記したのが辛うじて記憶に残っていただけで、日々の臨床ではほとんど意識できていません(泣)」

ジ「日々の臨床業務に追われていると、どうしても理学療法の本質を忘れてしまいがちになるよね。」

セ「そうなんです…。」

ジ「定義を確認すると、理学療法は、『理学療法士法及び作業療法士法』において、"身体に障害のある者に対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行わせ、及び電気刺激、マッサージ、温熱その他の物理的手段を加えること"とされている。」

セ「うわー、国試勉強で一生懸命丸暗記してたのが懐かしいです(笑)」

ジ「たしかにね(笑)まぁでも要するに、この定義からは様々な治療手段を用いて運動や動作を改善させるってことになるのかな。でも、実際の臨床ではこれだけでは不十分だよね。」

セ「リハビリテーションの一つの手段と考えるとなんとなくですが、重要なことが抜けている気がします。」

ジ「セ君、鋭いね!理学療法の対象は非常に幅広く、同じ年齢、同じ疾患でも個人にはそれぞれの心身の特徴や、生活歴、社会的背景、住居環境なども異なり、患者さんの状態像はその人のこれまでの"生活、人生"を反映したものだから、極めて"個別的"なものになるよね。」

セ「理学療法も奥深いですねー!」

ジ「つまり、疾患をみるのではなく、その人"らしさ"をみて評価・治療をするべきということ。そして、医療チームの一員として多職種と連携することで包括的なリハビリテーションの提供に繋がるんだね。」

セ「理学療法の本質がみえて、リハビリテーション理学療法の繋がりが理解しやすくなった気がします。」

ジ「まぁこれを臨床でしっかりと実現するのは経験値や職場環境にもよるから、なかなか難しいことかもしれないけどね…(汗)でも、このことが意識できているかいないかでは天と地の差だと思うし、全員に一様の理学療法を提供するなんてことはなくなって、各患者さんにテーラーメイド型の理学療法を提供できるようになると思うよ。」

セ「明日から早速、理学療法の本質を意識していこうと思います!あっ、でも…。」

ジ「あれ?意気込んでたのに、急にどうしたの?」

セ「個別性に配慮した理学療法ってどのように進めていけばいいんでしょうか…(汗)」

ジ「あー、ごめん、ごめん!それについても考えないと難しいよね。それじゃあ次は、その答えとなる"主訴"、"Hope"、"Need"を考えていこうか。」

セ「はーいっ!」

*引用文献
・椿原 彰夫(編):PT・OT・ST・ナースを目指す人のためのリハビリテーション総論 改訂第2版,診断と治療社.
・藤野 雄次、他(編):そのとき理学療法士はこう考える 事例で学ぶ臨床プロセスの導きかた,医学書院.

 

・本日のおさらい

1.理学療法は、単に運動や動作を改善させる手段ではない

2.理学療法の対象は、極めて個別的である

3.テーラーメイド型の理学療法により、その人らしさを追究できる

 

 

 

 

 

『リハビリテーションとは?』

主な登場人物:新人PT セイコー(以下、セ)、若手先輩PT ジシン(以下、ジ)

セ「先輩、リハビリテーションって一体なんなんでしょうか?」

ジ「うーん、それは僕も臨床をやっていてよく考えることなんだよね。ちなみに、セ君はリハビリテーションをどのように捉えているの?」

セ「身体になんらかの障害をもつ人々の改善を図るための機能訓練だと考えています。」

ジ「なるほどね。僕が新人の時と全く同じだね(笑)」

セ「どうしても僕たちが普段臨床で行っている理学療法を想像すると機能訓練というイメージが強くなってしまうんです...。」

ジ「その気持ちはよく分かるよ。そのイメージを払拭するために、まずはリハビリテーションの語源から確認してみようか。"rehabilitation"は、接頭辞の"re"と"habilitation"が組み合わさって成り立っていているんだ。"re"は(再び、もう一度")を意味しており、"habilitation"はラテン語の"habilis"「扱いやすい、適した」が英語の"ability"(能力)に発展したことや、ラテン語の"habito"(住居)が英語の"habitat"(住居、住まい)になったことが関連しているとされているんだよ。」

セ「そうやってもとの用語を繋ぎ合わせて考えると解釈しやすいですね!」

ジ「そうなんだ。これを直訳すると、"再び住居に適すること(能力)。すなわち、"もう一度能力を回復して社会生活に適合すること"。言い換えれば、"社会復帰・社会参加への手助け"ということになるね。」

セ「いかに自分の考えが浅はかだったかを痛感しております...(汗)」

ジ「この定義からリハビリテーションを捉えるために大切なことは、単なる身体の問題に対処するだけではなく、精神心理的、社会的、職業的、経済的な面にもアプローチしていく必要があるということだね。」

セ「それじゃあ、"今、リハビリしています"っていうよく耳にする言葉は間違った表現ですね。」

ジ「その通りだね。単にセラピストによる機能訓練をむやみに行うだけでなく、医学的な側面はもちろんのこと、社会福祉や保健の側面も重要で、"心身機能"の改善と様々な"社会資源"を活用して社会復帰・社会参加をサポートするべきってことだね。」

セ「これを意識しながら臨床に臨めば、普段の介入もより効果的なものに変わりそうですね!」

ジ「そうだね。だから、僕はリハビリテーションとは、その人"らしさ"を再獲得するために、様々な手段・資源を活用して、いろんな"選択肢"を提供することだと捉えているよ。」

セ「ということは、僕たちは理学療法という一つの"手段"を活用して、リハビリテーションに携わっているということですね。」

ジ「そういうことになるね。」

セ「先輩、リハビリテーションって奥深いですね!!」

ジ「そうだろ〜〜!!こんなに奥深いことに関わる仕事ができるなんて僕たちは幸せだな〜。」

セ「本当ですね!ありがたいことです!」

ジ「感謝の気持ちを持って、仕事に取り組む姿勢が患者さんに伝わるよう日々の臨床に臨めるといいね。」

セ「心に刻んでおきます!」

ジ「リハビリテーションの捉え方を考え直したしたところで、次は、僕たちが手段として活用する理学療法とは何かについても復習しておこうか。」

セ「はい!」

*引用文献
・椿原 彰夫(編):PT・OT・ST・ナースを目指す人のためのリハビリテーション総論 改定第2版,診断と治療社.

 

・本日のおさらい

1.リハビリテーションは、単なる機能訓練ではない

2.リハビリテーションは、その人らしさを再獲得するための過程

3.様々な手段・資源を活用して、たくさんの可能性や選択肢を引き出す

 

 

 

『新年のご挨拶と、投稿内容について』

主な登場人物:新人PT セイコー(以下、セ)、若手先輩PT ジシン(以下、ジ)

セ、ジ「明けましておめでとうございます!本年も皆様のご多幸を心からお祈り申し上げます。」

 

ジ「また新しい年が始まったね~。とうとう2020年か~。」

セ「今年はなんと言っても東京オリンピックですね!!」

ジ「そうだね。日本全体が"ONE TEAM"となってたくさんの金メダルが獲れるといいね。」

セ「どんなドラマが起こるか、いまから楽しみで夜も眠れませんよ!」

ジ「え、それはちょっと言い過ぎじゃない!?ちゃんと睡眠は取ってくれよー!」

セ「はい、先輩!」

ジ「ところで、セ君の今年の目標は何?」

セ「うーん、自信を持って患者さんにリハビリを提供することです!正直、今の僕は評価も治療技術もまだまだ乏しくて、何をしたらいいか分からないことが多々あります。なので、今年はそんな自分を変えるための努力をしていきたいです!!」

ジ「沁みたぜーーーっ!!!」

ジ「僕も新人の頃はよくそう思ってたよ。患者さんに自信のないリハビリを提供している申し訳なさと、情けなさで潰れそうになった。患者さんにとっては、新人であれ、中堅であれ、ベテランであれ、たった1人のリハビリの先生であり、しかも選ぶことができない。だから、セラピストになった以上はプライドを持って、自分の能力を向上できるよう努力し続けるべきだと思うんだよね。」

セ「先輩も同じだったんですね。」

ジ「うん。だから、僕はいろんな文献を読んだり、講習会に参加して知識や技術をインプットしてる。でも、どうしてもお金がかかることだから限度があるんだよね(汗)」

セ「そうですよね…。」

ジ「そこで、僕がこれまでインプットしてきた知識と技術をセ君のような悩める新人セラピストに還元していきたいと思ってるんだ。そう、僕の今年の目標は知識と技術をアウトプットして、理解を深めること!さらに、共有することで多くの患者さんに還元すること!まさに一石二鳥やーーん!!」

セ「先輩、最高っす!!(泣)」

ジ「できるだけ根拠のある知識と技術を還元したいから、僕の意見や考え方の元となっている引用も適宜参考にしてもらえるといいかな。」

セ「承知しました!」

ジ「壁にぶつかっても、諦めずに対処する能力を向上するための努力を積み重ねることが何より大切だと思う。それが真心のこもったリハビリテーションに繋がると、僕は信じてるよ。」

セ「はいっ!先輩、早速ですが、リハビリテーションってそもそも何でしたっけ?臨床を始めて、改めて考え直すべきだと思ったんですけど…。」 

ジ「よしっ、じゃあまずはリハビリテーションとは何かを考えていこうか。」

セ「よろしくお願いします!」

 

・本日のおさらい

1.新年の挨拶

2.投稿内容:悩める新人セラピストへの明日からの臨床に役立つ知識と技術

3.壁にぶつかっても諦めずに努力を続け、対処できると自信を持つことが大切